東京ミッドタウンでは定期的に非常用発電システムや耐震設備などの見学を行う「防災ツアー」を開催しているようです。
先日、参加できる機会があったのでツアーへと参加してみました。
2017年3月現在で築10年と比較的新しい高層建築物であり、リッツカールトンが入っているほどのビルなので防災への備えも国内最高峰であることは間違い無いだろうと以前から気になっていました。
想像していた以上に素晴らしかったので防災ツアーに参加したレポートを書きたいと思います。
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防災ツアーの内容
ツアー内容の詳細です。
- 耐震性の取り組み紹介(ミッドタウン・タワー4F)
- 防災センターの見学(ミッドタウン・タワーB1F)
- コージェネレーションシステムの見学(ミッドタウン・イーストB4F)
- 非常用発電機の見学(ミッドタウン・イーストB4F)
- 中水処理室の見学(ミッドタウン・タワーB5F)
- アクティブマスダンパーの見学(ミッドタウン・タワー44F)
- 緊急救助用スペースの見学(ミッドタウン・タワー屋上)
頂いた資料の内容を交えながら紹介したいと思います。
耐震性の取り組み紹介
ミッドタウン・タワーの4Fで受付を済ませると60名ほどが収容できる会議室に通されスライドを用いた紹介がありました。
耐震性
ミッドタウンは国内最高水準の耐震性をもつそうです。
耐震性についてから説明してもらえました。
それぞれの建物は、揺れに関する1次固有周期をもっています。地震による揺れは、その1次固有周期と地震動の周期が合致した時に大きく揺れます。一般的に、高層建築物ほど1次固有周期が長い傾向があるため、周期の長い長周期地震動では高層の建築物が大きく揺れ、周期の短い直下型地震では、低層の建物が大きく揺れます。
オフィス各棟の1次固有周期(元の位置に戻るまでの時間)
棟名 X方向
(東西方向)Y方向
(南北方向)ミッドタウン・タワー 5.70 Sec 5.79 Sec ミッドタウン・イースト 2.56 Sec 2.40 Sec ミッドタウン・ウェスト 1.76 Sec 1.73 Sec
また、東京ミッドタウンは国土交通省による告示波の1.25倍程度の地震動が来ても耐えられる構造になっているそうです。
おそらく首都直下型地震が危惧されているので防災ツアーにおいて特に紹介したいものなのだと思います。
制振装置・建物診断システム
ミッドタウン・タワーは制振装置を使用して建物全体の揺れのエネルギーを吸収しています。また、地震による被害をいち早く判断するため、建物診断システムを設定してます。
アクティブマスダンパー
タワー44Fに2ヶ所設置されている。
振り子のように揺れるオモリの作用で強風時の揺れや地震後の後揺れを抑制する。
建物診断システム
建物内に設置した地震計測装置を利用して建物の揺れに関する情報を収集。建物の構造等を考慮し分析することで目視では診断できない被害状況を推定する。
被害の大きい部分の特定が早期に可能になり、復旧を早める。
災害に対する取り組み
東日本大震災以降、放送設備の改修や運用の変更等に取り組んでいるそうです。
- 火災時の放送システムの改修
- 全館一斉避難 → 出火階・直上階を優先して避難
- 火災確認放送を1ブロック(3フロア)単位 → 1フロア単位
- 火災断定放送を全館一斉放送 → 出火階と直上階(10分以内に鎮火しなければ全館一斉放送)
- スピーカーの増設
- 階段室・芝生広場へスピーカーの増設
- 業務緊急放送システムの導入
- 災害発生時にBGM等に優先して緊急放送が流せるシステム
- エレベータの緊急地震速報との連動化
- 緊急地震速報(震度4以上)を受信時に最寄階に停止する耐震性
防災センター
設備、警備に関する情報を集約して各機器の適正な運転管理やセキュリティー管理を行っている。
要員配置
防災センターは、警備員・設備員で24時間365日体制。
警備員が火災等防災の監視を行うと共に、事故の対処・防犯に当たる。設備員は、設備が適切に運転できるように日々メンテナンスを行う。
セキュリティ
有人での監視と共にITV・機械設備を利用して異常監視を行っている。
中央監視システム ビルエネルギーマネジメントシステム
電気の使用状況の管理、空調の管理、設備機器の運転管理を一元的に行うことができるシステム。
熱源・電力・空調等の設備を一元管理・運営することで効率的な稼働と省エネを図っている。
自家発電
常用発電機とコージェネレーションシステムを非常用発電機としてA重油を燃料とするガスタービン発電機を採用している。
コージェネレーションシステム
都市ガスによる900kwのコージェネレーション(熱電併給)設備 2台を導入している。
発電時に発生する廃熱を利用して冷房や暖房の熱源に使いエネルギーの有効利用を図っている。
停電時には保安発電機として一部の熱源をバックアップして災害時バックアップに必要な重要諸室の熱源供給を可能としている。
非常用の発電機
冷却水の不要なガスタービン発電機4,000KVAを3台設置しており、東京電力側の供給がストップした時に発電をする。
停電から数分程度で供給がなされビルの防火・防災設備などの基本機能へは72時間程度の電気供給が可能。
水の再利用
生活雑排水や雨水などは浄化して再利用している。
中水処理施設
生活雑排水(洗面・給湯室排水)や雨水をろ過・殺菌処理した後にトイレの洗浄水や緑地の散水などに再利用される。
一度使用した排水や雨水を使用することで水道使用量の削減になる。住戸換算で約540戸分の年間使用水量が削減されたことに相当する。(2010年度)
緊急救助用スペース
ヘリコプターがホバリングにて救助活動を行うスペースが設置されている。
普段は施錠されていて立ち入ることができない。
通常の避難は原則として階段を利用して下階に向かうため、階段が利用できずに消防隊が緊急救助用スペースから救出を行う場合のみ利用する。
ただし、ホバリングスペースなので着陸は不可。
まとめ
以上の施設を一通り見学して周りツアーは終了でした。
見学中は一人一人に音声の受信装置が貸し出されて担当の方が話した声がマイクを通してイヤホンで聞こえるので音が大きいところや少し離れていても説明を聞き逃すことはありませんでした。
東京ミッドタウンには災害に備えた万全の体制が整っていることが分かりました。
国内でも限られた施設しかないであろうこれだけの設備を運用する費用がどれくらいなのだろうかと気になりました。国家の防衛予算も5兆円ほどになるわけで、予防策に対する費用はトレードオフなので難しいところですね。
今後、もしも東京で大規模な災害が発生したとしてもおそらくミッドタウンは被害が最小限の施設の1つになるのでしょう。備えあれば憂いなし。
家での防災準備は全く何もしていないことに少し焦りを感じました。できることから取り組んで行こうと思います。
ちなみに、ミッドタウンの運営は「東京ミッドタウンマネジメント株式会社」が行っているようです。
案内の担当者はスーツのジャケットを品の良い作業着にしたスタイルだったのですがカッコよかったです。会社のユニフォームのようで全員お揃いのジャケットを着用していました。
機会があれば六本木ヒルズの施設見学もしてみたいです。